なぜ本格的な薪ストーブには、あの高価な断熱二重煙突が必要なのだろうか?
これは薪ストーブをつけようとしている誰もが、
できれば安く薪ストーブを導入したいと思う一心で考えることでしょう。
私も「断熱二重煙突の縛り」さえなければ、薪ストーブの本体だけで安く設置できるのになぁ。
と、この業界に入るまえまではごく普通に考えていました。
だから「断熱二重煙突を自作しよう」とか
「全部、シングル煙突では何がいけないのか?」とか買う前から自問自答しながら、いろいろと考えていました。しかし!いまでは考えられないことです。
この過ちには、あるひとつの考え方か背景にあります。
それは
「煙突の本当の役割をわかっていない」
ということです。
例を紹介しましょう。
家を自分で作った大工が上手なお客様。実際に見せていただきましたが家はDIYとはおもえないほど立派な作りです。薪ストーブは、かねてからの夢だったそうで、既存の薪ストーブの煙突をすべてホームセンターのシングル管で家の外壁に這わせてつくりました。ご自身で家を作るぐらいですし、高いところも慣れてますから、軽いシングル煙突の接続なんて簡単にできてしまいます。でも色は黒色塗装しているものですから、シングルとはいえ安くはありません。全部で10万円弱はしたのではないでしょうか?これに自分の貴重な取り付け時間。工具も買えば軽く数万円は越えます。
そして薪ストーブを焚いて1年がたちました。
「なんか煙が逆流する・・・」
「薪がぜんぜん燃えてくれない」
「しまいには雪で煙突が折れた・・」
冬も始まりそうな11月、我々のところに恒例の緊急連絡がありました。
そうです、断熱二重煙突を使わないことによる当たり前の現象が「当たり前のように」起こったのです。
私たちは、自分でシングル煙突を取り付けたお客様が、どうしようもなくなって結局、「断熱二重煙突にとりかえ工事」を何度もやってきました。
だから「またそのパターン」ですね、と心の中でつぶやきながら、必ず断熱二重煙突でなければいけない理由をいちからそのお客様に説明し始めるのです。
また煙突は、「単なる煙の通り道」
だと思っている方はいませんか?
そういう方はシングル管でもいいと思うはずです。しかし、煙を排出する力を自然排気に頼らなければいけない薪ストーブの場合、断熱化された煙突(断熱二重煙突)による煙を上昇させる強い力(ドラフトといいます)が絶対に必要なのです。
おわかりのとおり薪ストーブにおける煙突は、車にたとえると、車における「エンジン」と同じ役割なのです。車はエンジンが非力だったりすぐに故障すると、絶対に走らないですよね。
同じように薪ストーブのエンジンにあたる「煙突」がしょぼい(詰まりやすい)と上記のDIYさんのように薪を燃やすことすらできなくなるのです。
薪を燃やす駆動力=煙突
の関係です。
鋳物の本格的な薪ストーブ+外部シングル煙突
これはランドクルーザーに軽トラのエンジンを乗せて走っているようなものです。平地は走ることができても、ちょっと条件が悪くなる坂道や雪道では走ることすらできません。車体(煙)を引っ張る必要なパワー(ドラフト)が足りないのですから。私は、昔ランクル、今は軽トラに乗っていますのでよく分かります。
ですから!我々薪ストーブ業者は、煙をうまく排出できない(=燃えない)ストーブを売るはずがありません。うまく燃えない薪ストーブをお客様に売ったら詐欺ですよね。
これが断熱二重煙突にこだわる理由であり、我々薪ストーブ業者の責務といっても良いぐらいです。
分かって頂けましたか?
しかし、残念なことに間違った煙突の設置(特に外部でのシングル煙突使用)は北海道のいろんなところで見受けられます。これはまだ北海道に本物の薪ストーブ文化が浸透していない証拠です。
我々はこれを広めたいと思って頑張って普及しようとしていますが、まだまだこれからです。
(これを読んでくれているみなさんも、ぜひお願いします)
我々はお客様にこう言います。
「ストーブは何でもいいです、しかし煙突だけは断熱二重煙突だけなんです」
ストーブの選択は「断熱二重煙突ありき」から話が始まるのです。